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Pinecil V2 vs TS101 徹底比較 (2026)
USB-PD 対応ポータブルはんだごて 2 大選択肢、Pine64 Pinecil V2 と Sequre TS101 を出力・チップ・ファームウェア・対応電源・コスパで 16 項目超で比較。電子工作・自作キーボード・モバイル修理に最適な 1 本を選ぶための判断基準。
公開: 2026-04-30
Pine64 Pinecil V2
¥7,500(JPY)
参考価格 (2026-04 時点、本体 + チップ 1 本、時期により変動)
Sequre TS101
¥11,800(JPY)
参考価格 (2026-04 時点、本体 + TS-B2 チップ、時期により変動)
スペック比較表
| スペック | Pine64 Pinecil V2 | Sequre TS101 |
|---|---|---|
| 最大出力 | 60W (USB-PD 20V/3A 時) / 88W (DC 21V 入力時) | 65W (USB-PD 20V/3.25A 時) / 65W (DC 24V 入力時) |
| MCU | Bouffalo BL706 (RISC-V 32bit, BLE 5.0 内蔵) | STM32F103 系 (Cortex-M3 32bit) |
| ファームウェア | IronOS (OSS、公式標準搭載) | Sequre 純正 (出荷時) / IronOS (上書き可) |
| 対応電源 | USB-C PD 3.0 / PPS / QC 3.0 / DC barrel 12-21V | USB-C PD 3.0 / DC barrel 12-24V |
| チップタイプ | Pine64 TS チップ (TS-B2 / TS-D24 / TS-I / TS-J など) | Mini Ware TS チップ互換 (TS-B2 / TS-D24 / TS-K など) |
| 温度範囲 | 100-450℃ | 100-450℃ |
| 立ち上がり時間 | 室温→350℃ 約 6-8 秒 | 室温→350℃ 約 5-7 秒 |
| ディスプレイ | OLED 96×16 (温度・W数・電源情報) | OLED 96×16 |
| 操作 | 2 ボタン (上下) + 短/長押し切替 | 2 ボタン (A/B) + 加速度センサー (動かすと自動オン) |
| USB | USB-C PD (給電 + ファーム書換) | USB-C PD (給電のみ、書換は別 USB 端子) |
| Bluetooth | BLE 5.0 (一部ファームでスマホ連携可) | なし |
| 本体寸法 | 長さ約 184mm (チップ装着時) | 長さ約 175mm (チップ装着時) |
| 本体重量 | 約 32g (チップ含む) | 約 33g (チップ含む) |
| ESD 保護 | 保護回路内蔵 | 保護回路内蔵 |
| 保証 | Pine64 公式 1 年 (海外発送ベース) | 販売元 1 年 (Amazon マケプレ経由は出品者依存) |
| OSS | 回路図 + ファーム + ケース 3D データ全公開 | ハード非公開、IronOS 移行で実質オープン化 |
Pros / Cons
Pine64 Pinecil V2
Pros
- USB-C PD 3.0 + PPS + QC 3.0 対応で 60W 級の急速加熱 (室温→350℃ 約 6-8 秒)
- BL706 RISC-V SoC + Bluetooth LE 内蔵でファーム書換も Web Flasher から完結
- IronOS (公式 OSS ファーム) が標準搭載で温度プロファイル・操作感の自由度が高い
- DC barrel ジャック対応 (12-21V) でラボ電源・モバイル電源両対応
- T12 ではなく専用 TS チップ (B2/D24/I/J など) で先端形状の選択肢が広い
- 公式販売価格が抑えられ、本体 + チップ込みで 8,000 円以内
- オープンソース完全準拠 (回路図 / ファーム公開) で長期サポートに不安なし
Cons
- 国内流通が薄く Pine64 公式 (海外発送) または Amazon マケプレに偏る
- 本体素材の質感がプラスチック寄りで Sequre TS101 と比べると地味
- 標準のチップが TS-B2 (汎用円錐) で、自作キーボード等の用途では追加チップ購入推奨
- USB-PD 充電器との相性問題が一部報告されている (PPS 非対応の安価電源で出力低下)
- 国内サポート窓口は実質なく、トラブルは英語フォーラムで自己解決が前提
Sequre TS101
Pros
- USB-C PD + DC barrel 同時対応、最大 65W で立ち上がり高速
- アルミ削り出し筐体で質感が高く、現場使いの耐久性も高い
- OLED 表示が視認性高く設定 UI が直感的
- IronOS / 純正ファーム両対応 (デフォルトは Sequre 純正、IronOS 移行可)
- Mini Ware TS80P / TS100 のチップ資産がそのまま流用可能
- Amazon.co.jp で安定流通、初期不良対応が比較的早い
- チップ交換が工具レスでロックリング式、現場で先端変えやすい
Cons
- Pinecil V2 比で約 +4,000 円の価格差
- BLE 機能なし、ファーム書換は USB 経由のみ
- Sequre 純正ファームは IronOS より機能が限定的、上書きで OSS 化推奨
- 標準チップ TS-B2 の品質はそこそこで、ガチ用途は別チップに買い替え必須
- 純正ファームの日本語ローカライズはなし (IronOS は英語/中国語/独語ベース)
なぜ USB-PD はんだごてが流行ったのか
数年前まで、ポータブルはんだごてといえば 24V のラボ電源を引きずって使う TS100 系が主流だった。これを変えたのが USB-C PD (Power Delivery) の普及。スマホ用 PD 充電器 (60W〜100W 級) がどこにでもある時代に、はんだごてもその電源で動かせるようになり、「カフェのテーブルではんだ付けする」「現場修理にモバイルバッテリーを持ち込む」が現実になった。
Pinecil V2 と TS101 はこの USB-PD はんだごて第 2 世代 の代表。両機とも 60-65W の出力を USB-PD 給電だけで出し、立ち上がり時間も卓上はんだごてと遜色ない。**「コンセントに縛られない電子工作」**は、自作キーボード・スマホ修理・現場メンテで標準環境になった。
両機とも IronOS (OSS ファームウェア) に対応しており、設定の自由度・温度プロファイル・スリープ動作などをカスタマイズ可能。**「使い捨てのはんだごて」ではなく「育てるはんだごて」**として位置づけられる点が、共通の魅力や。
出力と立ち上がり速度の差
Pinecil V2 は 60W (USB-PD)、TS101 は 65W。スペック上は TS101 がわずかに上だが、実用上の差は誤差レベル。両機とも 350℃ まで 5-8 秒で立ち上がり、リフロー作業や Pb-free はんだの 360℃ 級でも問題なく対応する。
DC barrel 入力時 はさらに上が狙える。Pinecil V2 は DC 21V で 88W 出力 (公称)、TS101 は DC 24V で 65W。ラボ電源を引きずる前提なら Pinecil V2 のほうが熱量に余裕があり、太いコネクタや大型基板の半田除去で 熱が逃げる場面で差が出る。
ただし USB-PD 環境で使うのが今や 95% のシーンで、その用途では両機ほぼ互角。**「DC 入力で最高出力を引き出したい」**というニッチな用途以外は、出力差で機種を選ぶ理由は薄い。
ファームウェア — 自由度の Pinecil、安定の TS101
Pinecil V2 は IronOS が公式標準で出荷時点から最新版 OSS ファームが入っている。Web Flasher (ブラウザ経由でファーム書換) が公式整備されており、初心者でもケーブル繋ぐだけで最新化可能。BLE 内蔵により スマホ連携 (温度ログ、グラフ表示) も将来拡張の余地がある。
TS101 は Sequre 純正ファームが出荷時だが、コミュニティでは IronOS への上書きが半ば標準化されている。書換手順はやや煩雑 (専用ブートモード突入 + DfuSe Tool) で、初心者には敷居が高い。書換後は両機とも IronOS 環境で操作感が揃う。
**「箱出しで OSS 環境がほしい」なら Pinecil V2、「ハード品質と質感優先で OSS 化は後回しでも OK」**なら TS101。両機とも IronOS で動かすのが定石なので、最終的な操作感は同等になる。
チップ (こて先) のエコシステム
Pinecil V2 は専用の TS チップ (Pine64 オリジナル設計) を使う。標準は TS-B2 (汎用円錐)、追加で TS-D24 (D 型 2.4mm)、TS-I (極細針)、TS-J (J 型 / 自作キーボード推奨) などがある。1 本 ¥800-1,500 程度、Pine64 公式と Amazon で入手可。
TS101 は Mini Ware TS チップ互換 で、TS80P / TS100 の資産がそのまま使える。これが大きい — Mini Ware のチップは選択肢が多く、市場流通も豊富。自作キーボード派が好む TS-K (ナイフ型)、TS-D24 (D 型) も手に入りやすい。
チップの 熱伝導効率 は両機ほぼ同等で、純正 TS-B2 同士で比べてもブラインドテストで判別困難。「特殊形状の先端を多用する」用途なら TS101 のほうがチップ調達が楽、汎用円錐で済むなら Pinecil V2 でも何ら不足ない。
操作性・UI・ポータビリティ
両機とも 2 ボタン UI + OLED ディスプレイ。温度設定、ブースト、スリープ、設定メニューが押し方の組み合わせで切り替わる。慣れれば直感的だが、初日は取説と睨めっこになる学習コスト。
TS101 には加速度センサーが内蔵されており、「動かすと自動オン、置くと自動スリープ」が可能。電池/コンセント節約で地味に効く。Pinecil V2 にこの機能はないが、IronOS のスリープタイマー設定で代替できる。
ポータビリティは両機とも 32-33g、長さ 175-184mm でほぼ同等。USB-PD ケーブル (60W 級、5A 対応 e-Marker チップ入り) と一緒に持ち歩けるサイズで、ペンケースに入る レンジ。出張・現場修理・ハッカソン持参に最適。
電源環境・実運用シナリオ
実運用で必要な周辺機器:
- USB-C PD 充電器 (60W 級、5A 対応 e-Marker ケーブル込みで ¥3,000-5,000)
- 100W モバイルバッテリー (現場用、Anker や RAVPower で ¥10,000-15,000)
- DC 電源アダプタ (ラボ用、Pinecil V2 の 88W 出力時、¥3,000)
カフェ・自宅作業: USB-C PD 充電器単体で OK。MacBook Pro 向けの 96W 充電器を流用すれば既存資産で動く。
現場修理・出張: 100W モバイルバッテリー (Anker 737 級) を併用。電車内・展示会場ではんだ付けが現実的になる。バッテリー満タンで Pinecil V2 / TS101 とも 1-2 時間連続使用可能。
自作キーボード作成: USB-C PD 充電器 + TS-K (ナイフ型チップ) の組み合わせが定番。両機とも対応するが、TS-K の流通量で TS101 が一歩有利。自作キーボード本体側の MCU 選びは M5Stack Core2 vs XIAO ESP32-S3 を参考に。
コスト・国内入手性・サポート
Pinecil V2 は本体 + 標準チップで ¥7,500 前後、Pine64 公式が海外発送 (送料 ¥1,500-2,500) または Amazon マケプレで国内発送。Pine64 公式は最安だが配送に 2-3 週間。Amazon マケプレは即日だが 10-20% 上乗せ価格。
TS101 は本体 + TS-B2 で ¥11,800 前後、Amazon.co.jp で安定流通。Sequre 公式店または個人輸入業者の出品が中心で、国内在庫が常時あり、即日発送が標準。初期不良対応の早さは TS101 が有利。
長期サポート: Pinecil V2 は OSS 完全準拠で Pine64 が事業継続している限りファーム/ハード共に保証。TS101 はハード非公開だが IronOS 移行で実質的にコミュニティサポートが続く。**「2030 年でも使える」**確度はどちらも高い。
結論:こう選べ
OSS 環境を初日から整備したい、価格重視、Pine64 のエコシステム (Pinephone / Pinetime 等) も気になる、海外発送 OK → Pinecil V2。¥7,500 で 60W USB-PD + IronOS + BLE 内蔵は他に代えがない。電子工作派・OSS 信者向けの王道。
国内即納・初期不良対応の早さ・アルミ削り出しの質感・自作キーボードのチップ調達のしやすさ → TS101。¥11,800 の価格差は質感とサポート速度に投資する価値がある。Mini Ware の豊富なチップ資産も心強い。
「迷ったら Pinecil V2」。価格差 ¥4,000 を質感に投じる価値があるかは個人の好みで、機能差はファーム書換後ほぼ消える。自作キーボード派でナイフ型チップ多用なら TS101、汎用ホビーなら Pinecil V2 が定石や。両機とも IronOS で動かす前提で見れば、**「見た目とサポート速度の好み」**で選んで後悔しない。
ESP32 系のマイコンを扱うなら Raspberry Pi 5 vs ESP32-S3 も併読。電子工作環境一式が見えてくる。
用途別の推奨
カジュアル / 初心者向け
Sequre TS101
パワーユーザー / 上級者向け
Pine64 Pinecil V2
よくある質問
TS100 / TS80P から乗り換える価値ある?
USB-PD 対応 + 60W 級出力で **乗り換え価値は明確にあり**。TS100 は DC 入力のみ、TS80P は QC 3.0 だが PD 非対応で電源選びに制約あり。2026 年現在は USB-C PD 充電器がどこにでもあるため、Pinecil V2 / TS101 のほうが日常運用が圧倒的に楽。チップ資産は TS101 にそのまま流用可能なので移行コスト低い。
USB-PD 充電器はどれを選べばいい?
**60W 以上の PD 出力 + PPS 対応** が条件。Anker 511 (Nano II 30W) では出力不足、Anker 715 (Nano II 65W) や Anker 737 (140W) が定番。MacBook Pro 用充電器 (96W / 140W) があればそれで OK。**5A 対応 e-Marker 入り USB-C ケーブル** も必須で、安価な 3A ケーブルでは出力制限される。
モバイルバッテリーで動く?
両機とも 60W 以上 PD 出力対応のモバイルバッテリーで動作。Anker 737 (140W、24,000mAh) なら満タンで Pinecil V2 / TS101 とも 1.5-2 時間連続使用可能。**「現場ではんだ付け」が日常的なら最強の組み合わせ**。
IronOS への書換はどれくらい難しい?
**Pinecil V2 は Web Flasher で 5 分**で完了 (ブラウザで pinecil.com にアクセス、USB 接続、ボタン 1 つ)。TS101 は **DfuSe Tool + ブートローダーモード突入** が必要で 15-30 分の作業。電子工作慣れしていれば余裕、まったくの初心者なら TS101 の純正ファームのまま使うのも選択肢。
鉛フリーはんだ (Pb-free) で使える?
両機とも **400-450℃ まで対応**しており、Pb-free (融点 217-227℃ 級、推奨設定 360-380℃) で問題なく使える。むしろ温度管理が精密でない安価なはんだごてより、温度プロファイルを細かく設定できる Pinecil V2 / TS101 のほうが Pb-free 向き。
自作キーボードのスイッチはんだ付けに使える?
**両機とも自作キーボード作成の定番ツール**。MX 系スイッチ (Cherry / Gateron 等) のはんだ付けは温度 320-340℃ で 1 秒/ピン、60W 出力なら全く力不足を感じない。**チップは TS-K (ナイフ型) または TS-J 推奨**で、TS101 は Mini Ware の TS-K が、Pinecil V2 は Pine64 純正の TS-J がそれぞれ流通豊富。
DC 24V のラボ電源は持ってる、それでも USB-PD 機が良い?
**ラボ電源持ちなら DC barrel 入力が利く Pinecil V2 が有利** (DC 21V で 88W、USB-PD より高出力)。TS101 も DC 入力対応だが上限 65W で USB-PD と差がない。**「ラボ環境では DC、現場では USB-PD」のハイブリッド運用**なら Pinecil V2 一択。
ESD (静電気) 保護は十分?
両機とも基本的な ESD 保護回路を内蔵。**MOSFET / 静電気に敏感な部品 (CMOS IC、MEMS センサー) を扱うなら別途 ESD マット + リストストラップ**が標準装備。これははんだごて単体の問題ではなく、作業環境全体の話。
壊れたら修理できる?
**Pinecil V2 は回路図 / ファーム / ケース 3D データ全公開**で、コミュニティが修理ガイド整備中。チップ部分の交換は両機とも工具レスでユーザー対応可。MCU が死んだ場合は Pinecil V2 のほうが情報入手しやすいが、TS101 もコミュニティで動作報告多数。**消耗品 (チップ) の交換** は両機とも ¥800-1,500 で済むため、本体丸ごと買い替えのリスクは低い。
